スペシャルインタビュー「働くということ」

海田悠写真事務所
肖像写真家
海田悠
笹川祐子

日本肖像写真界のトップランナーである海田氏の作品は、まさに芸術である。写真をまるで一枚の絵のであるかのように完成させていく作風は、独特の世界観を持っている。長年の間、企業経営者・財界の著名人・文化人を撮り続けてきた海田氏にとって働くということはどういうことなのか、本音に迫りました。

海田悠写真事務所 肖像写真家海田悠 Kaida Yu
社名 海田悠写真事務所
URL http://www.kaidayu.net
設立 1985年
写真集リスト
働くということ
+01
笹川 先生が写真家を目指されたきっかけを教えてください。
海田先生 子供の頃から人の顔にとても興味があって。この人の仕事は何かな、どんなことを考えているのかな、って、いつも人の顔を眺めてた。そんな大好きな人間の表情をとっておける一番手っ取り早い手段がカメラで写すことだったんだよね。それが仕事になるとは思わなかった。最初はギャランティはもらってなかったからね。
笹川 無償で!?
海田先生 いいな、と思った人に撮らせて、って気ままに撮ってたの。だけど、あるとき「君はプロなんだからギャランティをとりなさい」って言われて。そうなのかな、って思ったのが20代後半。そこからプロとしての技術を学ぶために広告業界に入った。カメラを持てば誰でも写真が撮れるけど、プロとアマチュアとに分かれるでしょう。プロのスキルって、光をどれだけ操れるか、だから。広告写真を撮ることでその技術を得た。
笹川 先生は本田宗一郎氏をはじめ多くの経済人や芸術家、作家の方々を撮影してますよね。
海田先生 40歳の頃に僕の作品作りとして始めたんだけど、当時、撮影の日は決闘に挑むような気持ちだったね。3ヵ月程前から撮影日が決まるんだけど、そこから撮影日に照準を合わせて意識する。そうすると不思議とその人の情報が、街中で、新聞を読んでるときに、いろんなところで目に飛び込んでくるんだよね。親子ほど年齢が上の彼らに挑むうえで、僕にできることはそれぐらいしかなかった、とも言えるけど。
笹川 名だたる実業家の皆さんを前にしてとても緊張したんじゃないですか。
海田先生 緊張しましたよ。すごい事業を立ち上げている人たちだからね。でも、どんな大人物にも物怖じはしなかった。人のこころは相手に映るから僕が気持をあげていかなきゃね。経験値も人生観もまったく違う彼らのことを僕がどれだけ想像できるか。それはしんどいことだったけど、やりがいもあったよね。それに歴史に名を残した人たちと会話ができるんだから。
笹川 なんて贅沢!
海田先生 でしょう。僕も、なんて贅沢な職業なんだ! って思ったよ。この職業ならではの特権だよね(笑)
笹川 今は若い起業家の方たちも撮影なさってますよね。
海田先生 うん。彼らは侮れないよ。
笹川 どんなところが?
海田先生 撮影し始めた頃、「刻まれたシワもない若い人をなんで撮っているんだろう? 意味がないんじゃないか」なんて思ってたの。ところが、撮り進めているうちに彼らの志や熱い想いは僕が撮っていた経済人たちと同じだ、ってことに気づいて。
笹川 定点観測に目覚めた?
海田先生 そう。会社は社会性がないと成り立たないでしょう。その会社組織を率いる人は、社会のために働いて万人に何かをプレゼントしたい、という正しい志を持っていないと。僕が会った何人もの経営者も「社会のために働きたい」と言っていた。それが若い人たちのなかにもあった。撮影した人数は200を超えたけど、このなかから、将来の本田宗一郎や稲盛和夫が出てくるかもしれない、って思ったね。今の彼らにはシワもなくつるんとした顔をしているけど、撮り続けたら顔の形も変わるし、起業家としての立派なシワも刻まれるよね。

仕事のやりがい
+02
笹川 先生はその若い方たちと経済人たちとの交流の場を開かれていますよね。
海田先生 朝4時から座禅を組んで7時には出社している何兆円もの売上をあげている大企業の社長もいれば、資金繰りをバリバリこなすオーナー社長もいる。若いうちにいろいろな経営者のスタイルを見ることはとても良いことだし、大先輩の彼らが何を規範として生きようとしているか、を若い人たちが知れる機会があるといいな、と。経営者って横のつながりはあるけど、縦のつながりが薄い感じがする。
笹川 その交流会で縦のつながりができますよね。
海田先生 先輩が後輩に伝えられる機会でもあって、縦のつながりが強くなるといいよね。
笹川 写真家というお仕事のやりがい、ってどんなところにありますか?
海田先生 素晴らしい顔が撮れたとき。それこそ本人も気づいていないであろう素敵な表情を引き出して(写真に)、刻むことができたのは、この僕なんだ! ってね。その作品たちを収めた本も出版もしているから、形としても遺る。

若い方へのメッセージ
+03
笹川 若い方々へのメッセージをどうぞ。
海田先生 いやいや、僕は息子に説教されるくらいだから(笑)若い人たちには「未来をお願いします」って思ってる。
笹川 「今の若い者は!」って思わないんですね。
海田先生 時々あるよ。「ああ、こんなことを言い始めたら終わりだな」なんて思ったりする(笑)10年程前はそれが強くあったけど、気づいたんだよね。例えば、一つの事件が起こったときに僕の見方と彼らの見方って全然違う。こういう感覚や価値観の違いにエネルギーを感じるし、新しい何かを作っていくんだろうな、って。頭ごなしにひとつの価値観で抑え込んではいけなくて、彼らの信じる価値観もあって、僕が信じる価値観もあって良いの。彼らは僕らには生まれることのない新しい感覚を持ち、若々しいエネルギーがあるからね。
笹川 そんな彼らの力を信じよう、と。
海田先生 そう。サントリーホールディングス(株)の創業者・鳥井信治郎の口癖に「やってみなはれ」ってあるでしょ。こんなことしちゃいけない、あんなことしちゃいけない、って言うのではなくて、「じゃ、やってみれば」って言える感覚が僕のなかに芽生えたんだろうね。あれ? 僕、戦う意欲が減ったんだろうか(笑)
笹川 (笑)いやいや。
海田先生 うん、最近の自分自身のことを言うとね、初心に戻ってがむしゃらに挑もう! と思っていて。初心=謙虚さなんだけど、僕には長年培った経験があるから、謙虚さが足りないこともあるかもしれない。横柄ではないとは思っているけど、もし横柄なところがあったら無くしたいし、常に謙虚でありたいよね。

インタビューを終えて笹川より

海田先生、素敵なお話をありがとうございました!

今までの経営者の方々とは一風趣の変わった出来上がりに、とても嬉しく興奮してしまいました。
芸術家ならではの視点にたくさんの気づきをいただきました。

今、先生が撮られている若い起業家から、将来の本田宗一郎、稲盛和夫氏のような人が出てくることを楽しみにお待ち申し上げます。

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