スペシャルインタビュー「働くということ」

日本電鍍工業株式会社
代表取締役
伊藤麻美
笹川祐子

30歳で米国へ留学。宝石鑑定士の資格を習得したところ、父の他界により業績が悪化した会社のために帰国。
まったくの未経験から、3年で黒字化させ、不況産業を元気によみがえらせた注目の2代目社長として、政府の政策委員なども務め活躍中です。
経営者・妻・母親の三足のわらじをはく伊藤社長にとって働くとはどういうことなのか、インタビューを敢行しました。

日本電鍍工業株式会社 代表取締役伊藤麻美 Ito Mami
社名 日本電鍍工業株式会社
URL http://www.nihondento.com/
設立 1958年
事業内容 電気メッキ(めっき)加工・無電解メッキ(めっき)加工・イオンプレーティング・その他の表面処理 など
働くということ
+01
笹川 伊藤社長にとって働くということどういうことしょうか?
伊藤社長 私にとって働くことは、「楽しいこと」です。経営者になってから特に感じるようになりましたが、ここまで働くことが楽しいとは思いませんでした。もちろん、最初は大変なことの方が多かったのですが、経営に携わるようになってからは、目標を達成させることの喜びを実感しながら日々楽しんで仕事ができるようになりました。会社経営には、日々の小さな目標や長期にわたる大きなゴールなど様々ありますが、今は希望や夢を持ち小さな成功例をささやかな喜びに変えながら、自分を勇気づけて仕事をしています。経営者の場合、誰かにモチベーションを上げてもらうという機会がなかなかありませんので、仕事を楽しめるように自分で自分をコントロールしながら仕事をしています。実はこのプロセスがとても楽しいものなのです。会社が伸びるも伸びないも自分次第、これこそが経営という仕事の責任であり、やりがいなのだと感じております。

経営再建について
+02
笹川 赤字状況から3年で黒字へ。経営を再建していく中で心がけていたことはありますか?
伊藤社長 会社はチームです。私が良ければそれでいいということはなく、社員の気持ちを尊重しながら、皆にとっていい結果は何かということを常に考えるようにしておりました。それから、社員とのコミュニケーションも重視していました。何か行動を起こす際には必ず事前に「なぜこういうことをするのか、その結果どうなるのか」という部分をしっかり説明し、社員の理解を得ながら進めていくよう心がけていました。方向性の共有、その部分にはかなり力を入れていましたね。

働くことで得られるもの
+03
笹川 伊藤社長にとって、働くことで得られるものは?
伊藤社長 「達成感」ですね。それと、働くことによって人脈や考え方も広がります。働くことは、自分にプラス要素以外のことは何もないのです。もちろん、毎日喜ばしいことばかりではありませんが、それも結果的にはすべては自分の肥やしになっていきます。 私にとって仕事は、言ってみれば、「未体験の栄養剤」のようなものですね。
働くことで、もちろん報酬も得られますがそれはあくまで結果です。私の場合、報酬のために働くというより、働くことの結果として報酬が付いてくるのだと考えています。報酬よりももっと重要なものが、働くことで得られるのですから。
笹川 社員(従業員)にとって、働くことで得られるものは何だと思いますか?
伊藤社長 社員それぞれ、もののとらえ方が違うので一概には申し上げられません。人によっては生活費を稼ぐためと考えていたり、ある人にとっては夢を実現するためだったり。それを統一する必要はないと考えています。ただ、経営者として社員が幸せであるかという部分は非常に気になります。ですので、毎朝社員ひとり一人にあいさつをしながら顔色を見て回っています。そこで、気になった社員にはひと声かけるようにしているんです。
それから、仕事に対する社員ひとり一人の価値観は違えど、チームの向かう方向は同じでなくてはならないとも考えております。それを確認するため、年に1回社員全員と面談をしています。そこで、社員が今何を考えているか、どう感じているかをすくい上げ、その上で全員の気持ちをプラスの方向に導くようにしています。

今の日本に求められるもの
+04
笹川 インターナショナルスクール・海外留学のご経験を踏まえて今の日本社会で求められているものは何だと思いますか。
伊藤社長 インターナショナルスクールでは、日本にいながら日本とは全く別の世界でした。
小学校からピアスやパーマもOK。すべてが個人に任せられていましたし、先生からも一人の大人として扱われていました。ここでは独立心を養う教育が行きわたっていましたね。
また、何か問題があった時、その答えは決して一つとは限らないという考え方もここで学びました。誰かが人と違った意見を出しても、その答えを批判するのではなく「そういう考え方もあったのか」と受け入れる。また、質問に答える際は先生から指されるのを待つのではなくこちらから率先して手を上げて発表するなど、独自性や主体性を重んじる環境でした。
それに比べると、日本の学生は自分の意思を主張したり、皆と違った考えをアピールすることに慣れていないのかもしれません。輪を重んじる日本の教育がありますからね。もちろん、協調性や輪を大事にするという文化は大切です。
しかし、グローバル社会では個人の意思をはっきりと示すことが求められます。
輪も重要ですが、自分で物事を考えその意思を提示していく力が、今後の日本に求められていくのではないでしょうか。
最近の若者の中に、自分の身勝手で周りに迷惑をかけたり、周りへの配慮が欠けている若者を見かけることがあります。自由を履き違えているのでしょうか。
自由ということや独立心を持つということは、決して自分の好き勝手なことをしていいということではありません。そこには協調性があって初めて成り立つものですから。
そこで、当社では「社内ハーモニー」というものを大事にしています。全社員を「オルケストラデルデント(ラテン語)」と名付け、オーケストラに例えています。
誰がどの楽器でもよい、全体としてハーモニーを奏でていればいいという発想です。
このように当社ではハーモニーを乱さない上で、社員ひとり一人の個性を尊重するようにしています。

社会貢献について
+05
笹川 御社の社会貢献に対する考え方を教えてください。
伊藤社長 会社は、利益を生まなくてはなりません。税金を払うことも重要な社会貢献です。
ただ、当社において、いつも社員に話をしていることは、目先の利益でなく「喜んでいただくお客様の顔を思い浮かべよう」ということ。そしてお客様はもちろん、社内の従業員同士であってもそれは同じです。当社の製造ラインには様々な工程があります。ここをもっとこうしたら、次の工程の人がやりやすいのではないかなど、相手に対する気づきや思いやりが重要だといつも話しております。
また、今自分がやっている仕事やそのやり方は本当に正しいことなのだろうかと、常に問題意識を持ちながら仕事をして欲しいですね。こうして皆が努力をすれば、良い品物しかできないはずです。良い品物ができれば、お客様は喜んでくれます。お客様に喜んでいただければ、従業員の満足度や充実度も高まり、会社も良い循環で回るようになります。その結果、一人ひとりのものの見方も良い方向へと展開していくと思うのですね。さらにその延長が、ちょっとした花や動物への気配りだったり、老人に対しての思いやりが芽生えたりなどとポジティブスパイラルが生みだし、世の中が平和でもっと暮らしやすくなるのだと私は信じています。そして、最終的には環境に配慮できる人が増えれば、未来の子供たちにこの地球を残していけるのではないでしょうか。
当社の経営理念に「アースフレンドリー」という言葉があります。これは、単に環境にやさしくというわけではありません。この言葉は日々の仕事から生まれたもので、社会を思う人の数が多いほど会社は発展していくという意味の言葉です。今後もこの理念を大事にしながら、社会はもちろん、会社・社員に対しても愛を持って接していきたいと思います。

若者へのメッセージ
+06
笹川 最後に若い人へのメッセージをお願いします。
伊藤社長 何事にもあきらめないで欲しいですね。気合い・根性・元気、やっぱり気持ちが大事なんです。失敗をそのままで終わらせなければ、失敗にはなりません。つまり失敗をしっかり挽回すれば、すべて成功で終わるのです。最初の小さな失敗を、あたかもこの世の終わりのように考えるのではなく、「命一つあればいくらでも何でもできる」と心に決めて、失敗を乗り越えていって欲しいですね。またそれと同時に、失敗をどうすれば回避できるかということも併せて考えて欲しいです。例えば、あなたが誰かを喜ばせようとした時、言葉の選択一つで相手を怒らせてしまうこともあります。本気で相手を喜ばせようと思うのなら、相手にとって最高の言葉を選ぶように努力して欲しいです。小さなことですが、こういう気持ちがとても重要なのです。日本の未来は、今後皆さんが支えていきます。もっと元気に、そして何事にもめげずに頑張っていってください。

インタビューを終えて笹川より

伊藤社長 貴重なお話をありがとうございました!

以前、女性経営者の会で、伊藤社長の講演を伺った際、資金繰りや銀行との交渉でご苦労されたお話には、皆が涙ぐみながら聞くシーンがありました。心に響き、深い感銘を受けました。
その大変な時に、応援してくださる方がどんどん増えてきたとのこと。伊藤社長のひたむきさに、その明るく素敵な笑顔に巻き込まれていくのだろうと、今回のインタビューでも確信しました。
ますますのご活躍を心から祈念しております。

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